各種ワクチンについてのご紹介です。

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少しずつ作っていきます。

  • 当院でのワクチン料金表はこちら
  • 弊院謹製ワクチンスケジュール一覧はこちら。(2017/04/01改訂)
  • これ↑をやたら簡単にした一覧リストはこちら

DPT(三種混合)ワクチン

2015.1月現在、DTPワクチンは既に廃止され、出荷停止となっています。実際はDPTP(4種混合;DPT-IPVとも表記)を使う事になります。

といってもDPTPはこれにIPV(不活化ポリオ)を足しただけの物なので、解説として本稿を残します。

ジフテリア・百日せき・破傷風の三種混合ワクチンです。

ジフテリアは、ジフテリア菌の飛沫感染(ウイルスや細菌が、感染者の咳やくしゃみなどで細かい唾液とともに空気中へ飛び出し、それを吸い込んだ他の人が感染すること)によりおこる病気です。
1981年のDPTワクチン導入以来、現在では年間10名未満程度しか患者が発生しませんが、もしかかってしまうと咽頭などに偽膜を形成して窒息死することもあるかなり怖い病気です。
症状は高熱、のどの痛み、犬吠様のせき、嘔吐などです。発病2~3週間後に菌の出す毒素によって心筋障害や神経麻痺をおこすこともあります。

百日咳は、百日咳菌の飛沫感染でおこります。ワクチン導入以来、患者数は減少してきているのですが、近年また感染者が増えてきています
百日咳は普通のかぜのような症状ではじまります。続いて咳がひどくなり、顔をまっ赤にして連続性に咳込むようになります。咳のあと急に息を吸い込むので、小児では笛を吹くような音が出ます。大人では典型的な症状が出にくく、診断が難しくなりがちです。乳幼児は咳で呼吸ができず、チアノーゼやけいれんをおこし、場合によっては窒息で死亡する例もあります。そこまで行かなくても長い咳で苦しむことの多い病気です。

破傷風は、破傷風菌の感染によって起こります。破傷風菌はヒトからヒトへは感染しません。普段は土の中などに潜んでいて、傷口などからヒトの体内に侵入・感染します。自分では気づかないような軽い傷口からでも入られることがあります。菌の出す毒素のために、けいれんを起こしたり、死亡したりします。

DPTワクチンは、以上の3疾病を予防するためにつくられたワクチンです。たとえば百日咳患者の半数は2歳未満であり、また窒息例は乳児に多い事がわかっているので、適時を逃さず生後なるべく早くから予防したいものです。

標準的な接種時期

生後3ヶ月から開始して約1ヶ月毎(3~8週)に3回(以上を「1期初回」と呼ぶ)、続いてその1年後にもう1回(これを「1期追加」と呼ぶ)。これはIPVと全く同じ接種法です。

DPTP(四種混合)ワクチン

役所の書類では“DPT-IPV”と書いてありますが、同じ意味です。ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオの四種混合ワクチンです。2012/11/01登場の新顔ですが、要するに従来の三種混合(DPT)不活化ポリオ(IPV)を混ぜて1本にしただけですから、内容的には新しい物ではありません。効果等はそれぞれのリンクをご参照下さい。1本で済んだ方が何かと便利ですから、2012/11/01以降はDPTやIPVでなく、両者を併せたDPTPを接種するのが原則です。なのですが!

現状での問題点

  • 全然生産が間に合わないのです。本来これを接種すべき3ヶ月児の分すら怪しい。
  • 従って2012/11/01時点で既に3ヶ月児を過ぎてる人(具体的には2012/07/31までに生まれた児)の分は、まずないと思います。そういう児には従来通りの三種混合(DPT)不活化ポリオ(IPV)を同時または別々に接種する事になります(当院としては同時接種がオススメ)。
  • 厚労省ちゃん(正確には時の厚労相)が実情無視して充分な生産見通しが立たない内にやると言い出しちゃったので、役所の広報と現実の乖離が激しく、この辺↑の話はもう二転三転して情報が相当錯綜しています。希望者は正しい最新情報をつかむようにしてください。
  • つか、親がこんな事↑気にしなくちゃいけないのは本来とてもヘンな事だと思います。
  • 2015年1月現在、上記品不足はほぼ解消され、全員がDPTPで接種できるようになりました。これによりDTPは廃止となります。

標準的な接種時期

生後3ヶ月から開始して約1ヶ月毎(3~8週)に3回(以上を「1期初回」と呼ぶ)、続いてその1年後にもう1回(これを「1期追加」と呼ぶ)。当然ながらこれはDPTIPVと全く同じ接種法です。

DT(二種混合)ワクチン

赤ちゃんの頃にうった三種混合ワクチンは不活化ワクチンですから、接種後10年位すると効果が(ほぼ)切れてしまいます。この効果を高め持続させるために、11歳頃(つまり三種混合ワクチンの効果が切れる頃)に接種するワクチンです。内容はジフテリア・破傷風の二種混合です。え? P (百日咳)成分はどこへ行ったかって? 実はそれが問題なんです。

標準的な接種時期

というわけで11歳頃です。

現状での問題点

  • DT(二種混合)はDPT(三種混合)から1種抜いた物なわけですが、何を抜いたかって言うとP (百日咳)成分です。
  • つまりDTにより、ジフテリア・破傷風成分については11歳位で再接種され、切れかけたDPTの効果が延長されるのに対し、百日咳のワクチン成分は1歳半頃を最後に再接種されないのでそこで効果が切れてしまうわけです。
  • 近年、百日咳は大人にも結構流行しており、その事とこれ↑は関係が指摘されています。
  • 院長個人としては、11歳時にやるのはDTでなくDPTであるべき、と考えます(海外ではジフテリア成分の効力を少し落とした大人向けのDPTが使われます)。ただし現状、それをやるなら自費の任意接種となり、トラブルがあっても全く国家補償が受けられなくなるので、積極的にはオススメしません。

不活化ポリオワクチン(IPV)

ポリオは正しくは「急性灰白髄炎(poliomyelitis)」という病気です。 "灰白髄"というのは脊髄の灰白質の事で、下図の脊髄断面真ん中のH字型をしている所の事。要するにポリオは脊髄の一部に炎症を起こす病気で、従って患者に重大な神経障害を起こします。俗に「小児麻痺」なんて言ったりしますが、小児だけじゃなくて大人もかかります。

脊髄断面図

ポリオの病原体はポリオウィルスです。ポリオウィルスは口からヒトの体内に入って感染しますが、ほとんどの場合は無症状か、あっても発熱・咽頭痛・嘔吐などのカゼ症状程度です。重大な麻痺につながる例は少なく、感染者の0.1~2%程度に過ぎませんが、そうなった場合はまずい。ポリオウィルスがノドや小腸の粘膜で増殖後、血液を介して脊髄(や脳)に到達、そこの神経細胞に感染してこれを破壊してしまい、下肢を中心とした左右非対称性の弛緩性麻痺を起こします(要するに脚が動かなくなります)。基本的に治療法はなく、麻痺は生涯治りません。

患者のノドや便からは発症後しばらくポリオウィルスが出て来るので、これが周囲の人の感染源になり、流行を起こします。かつてポリオは世界注で流行し、多くの人を弛緩性麻痺にしてきました。 しかし1960年前後に相次いで登場したポリオワクチンにより、多くの国で流行は抑制され、2012年現在、あと一息でポリオウィルス撲滅という所まで来ています。

ポリオ流行国

ポリオワクチンには2種類ある

ポリオを減らしてきたのは間違いなくワクチンの力です。かかってしまうと治療法がないので、ワクチンによる予防が重要です。ポリオのワクチンとしては、経口生ポリオワクチン(Oral Polio Vaccine; 略してOPV)と、(日本では)皮下注射の不活化ワクチン(Inactivated Polio Vaccine; 略してIPV)の2種があります。

OPVとは?

OPVは生ワクチン、つまり口から(弱毒化はさせてるが)生きてるポリオウィルスを飲み込んで、腸の粘膜にわざと感染させ、これによって腸の粘膜細胞に対ポリオウィルス免疫を持たせようという設計のワクチンです。この利点は様々あります。ポリオにかかる時は[ポリオウィルスが口から入る → 腸で増殖 → 血液に侵入し脊髄へ移動 → 麻痺]という過程をたどる事を思い出しながら↓見てみてください。

  • 腸が直接免疫を持つので、接種後はポリオウィルスが腸で増殖できない。つまり感染自体が起こらず、大雑把に言ってポリオにかからなくなる
  • OPVは血液中にも抗体を作るので、ウィルスが血液に入ってもそこで即排除され、脊髄まで行く事ができなくなる。脊髄をやられなければ麻痺も起きない。つまり万一感染した場合でも麻痺の発生が防げる
  • 効果は半永続的であり、乳児期の接種だけで50年以上抗体が保持される事がデータとして確認されている。
  • OPVを接種した人の腸に入ったポリオウィルスは、腸が獲得した免疫で殺されてしまい、便から出てこないから、罹患者がウィルスをまき散らして他の人に感染させる事も少なくなる。即ち、「流行を止める」効果を持つ

このようにOPVは対ポリオ戦略として極めて優れた性質を持った重要なワクチンです。決してどこかのマスコミ上がりの知事の言うような「危険なだけのワクチン」なんかではありません。 OPVの有効性は90%以上と言われ、かつての日本を含めポリオの激減に大いに貢献しました。現在でも世界で毎年40万人の子供達がOPVの力でポリオを免れています。

OPVの問題点、VAPP

しかし一方で、 OPVが生ワクチンである以上、どうしても避けられない問題があります。それは「ワクチンに入ってるポリオウィルスは弱毒化されているが、希にその弱毒化ウィルスが息を吹き返して毒性を持ち、そのせいで被接種者にポリオ症状を発生させてしまう事がある」という問題です。早い話が「ワクチンのせいで麻痺を作ってしまう」という事です。これをVAPP (Vaccine Associated Paralytic Polio)と呼びます。

VAPPを起こすのは被接種者に限りません。OPV中のウィルスは「生きている」ので、天然ウィルスと同様、便中に出てきます。この便中のウィルスが毒性を持つと周囲の人(たとえばワクチン未接種の親や保育園のお友達)を感染させてしまう事がありえます。

VAPPの正確な頻度はよく議論になりますが、日本で500~600万接種に1例と言われています。ただしここ数年間に親の感染例含めて数例散発したので、これを入れると70万接種に1例程度になります。少ないが、決してゼロではありません。日本の0歳児は大体100万人位(2012年現在)なので、ざっくり言って5~6年に1人、厳しく見て1~2年に1人VAPP起こす人が出る事になります。ポリオにかかって麻痺になる事を予防しようとして、麻痺になってしまうのでは本末転倒です。これはOPVの最大の弱点と言えるでしょう。

では、もう一つのポリオワクチン、IPV(不活化ポリオワクチン)にはそのような問題はないのでしょうか?

IPVとは?

IPVは不活化ワクチンで、つまりウィルスは生きてないので、被接種者はポリオに「かかる」事はなく、当然便中に感染力のあるウィルスが出る事もありません。つまりVAPPは原理的に起こり得ないわけです。これは安全性という点でIPVの大きな強みです。

IPVは血液中に対ポリオウィルス免疫を作ります。血液中に免疫があれば、ポリオウィルスが腸に感染しても、そこから血液に入った時点で排除され、脊髄まで行く事ができなくなります。脊髄をやられなければ麻痺も起きないので、IPVを接種していればポリオによる麻痺の発生は防止できます。

ただし「ウィルスが生きてない」ワクチンなので、OPVの持つ数々の利点がIPVにはありません。具体的には

  • 腸の粘膜細胞は免役しない(極軽くは“する”という報告もあるが、実効はない)ので、腸内ではポリオウィルスを殺せない(→ 腸への感染自体は防げない)。
  • 腸で殺されずに増殖したポリオウィルスはそのまま感染者の便に出て来ちゃうので、これが他者の感染源となり流行を継続させる。つまり流行抑制の役には立たない
  • 一般に不活化ワクチンは、定期的に追加接種(ブースター)し続けない限りざっと5~10年で効果は減弱するHPVワクチンなどの特殊な工夫をされた例を除く)。IPVもそう。

OPVがいいのか、IPVがいいのか

このようにOPVにもIPVにも一長一短があり、どちらがいいのかはその時の状況によります。

現在ポリオが流行中の国では、70~500万接種に1回「しか」おきないVAPPより、天然物(=野生型ポリオウィルス、という)にかかって麻痺になるリスクの方が遙かに高いし、とにかく流行を止めて世間にウィルスがいないようにしなくちゃなので、OPV以外の選択肢はありません。

しかしもう長年流行してない、即ちほぼ野生型ウィルスがいない地域では、普通に生きててポリオに「感染する」事はまずおきないし、そもそも流行してないんだからそれを「止める」必要もない。従ってOPVであるべき必要性が薄く、野生型ウィルスよりOPV中のウィルスによるVAPPのリスクの方が高いので、IPVの方が良い、という事になります。

日本ではどうか

日本でも1940~60年代半ばにかけてポリオの大流行があり、これを止めるために超法規的措置まで使って開発されたばかりのOPVを導入したという経緯があります。OPVの効果は劇的で、長く続いた流行をたった3ヶ月で鎮静化させ、世界中を驚かせました。OPVはその後も使われ続け、もう1972年(海外からの持ち込み例を入れると1980年)以来、日本で野生型ポリオは発生していません。OPVの力で野生型ウィルスはほぼ撲滅されたのです。

しかし一方で、OPVによるVAPPはある程度の確立で起き続けて来ましたし、OPVを用いる限り今後もゼロにはなりません。野生型ポリオにかかるおそれがほぼなくなった現在、日本では天然ポリオにかかるリスクよりVAPPでポリオになるリスクの方が高い事になります。これでは何のためにワクチンうってるのかわからない。というわけで2012/09/01、日本もそれまで接種していたOPVをやめ、IPVに完全移行する事になりました(例によって世界からは大分遅れましたけどネ!)。今後ポリオワクチンを接種する人は全てIPVになり、OPVは廃止されます。

IPVの標準的な接種時期

生後3ヶ月から開始して約1ヶ月毎に3回(以上を「初回接種」と呼ぶ)、続いてその1年後にもう1回(これを「追加接種」と呼ぶ)。つまり計4回。これはDPTと全く同じ接種方法です。

ただし、2012/08/31までにOPVを接種した児については、以下のような扱いとなります。

  • 既にOPVを2回接種している児は、もう対ポリオ免疫があるので対象外です。IPVは接種しません。
  • 既にOPVを1回だけ接種している児は、それを「IPVを1回やった」のと同等と見なします。つまりIPVの「初回接種」は2回で済ませ、その1年後にもう1回(追加接種)やります。IPVは計3回となります。
  • まだ1回もOPVやってない児は、IPVを最初から(3+1の計4回)やります。

4種混合ワクチンについて

このようにIPVはDPTと全く同じ接種法なので、ほとんどの例で両者を同時接種する事になります。だったら最初から一緒にしちゃえばいいじゃん、という事で、DPT(3種混合)とIPVを混ぜた「4種混合」ワクチンが2012.11月に登場しました。今後はDPTとIPVを別々に接種するのでなく、4種混合ワクチンで一遍に済ますのが合理的です。

ただし4種混合ワクチンは極端に品薄のため、当面は実際に使える対象者がかなり限られてしまいます(コチラ)。

書類的な事

これから3ヶ月齢になる児には、自動的に江東区から接種用の書類が送って来ます(注:2012/11/01以降は4種混合ワクチン用のが来ます)。それ以外の、OPVを敬遠してIPV待ちしてたお子さんとかには、ワクチン対象者であっても自動的には書類が来ませんので、該当者は当院までご相談下さい。ただし、無料でできるのは7歳半未満までです。

現状での問題点

  • 2012/09/01現在、実は「追加接種(4回目相当)」は【まだ法的に認可されていない】ので、現状 「4回目」を接種できない。→ 2012/10/23 認可され、この問題は解決しました。
  • その「追加接種」だが、現在定められている「初回接種の1年後」設定は、諸外国の例に比べて早すぎ、これでは(たぶん)10歳にならない内に免疫が切れてしまう。
  • 従って当然、その頃に再追加接種が、その後も定期的な再々追加接種が必要になるはずだが、現時点でそのような話は出ていない。(ま、エライ人がちゃんと検討してると思いますけどね)
  • 「OPVを1回だけ接種している児は、それを“IPVを1回やった”と見なし、“初回接種”は2回で済ませる」という方針は、個人的にはちょっと問題ありと思います。詳しくは割愛。